こちらは日本トランスパーソナル心理学/精神医学会公式ホームページです

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学会長から皆さまへ



 思いがけずも、日本トランスパーソナル心理学/精神医学会の第三代会長の任を担わせていただくことになりました石川勇一です。霊性 spirituality を真正面から最重要な主題として探求する本学会の存在意義は、設立当初も今日もこれからも、かわることなくきわめて重大なものであり続けると思っております。
 私の専門は臨床心理学であり、心理療法家です。心理学 psychology とはその語源からして本来、霊、魂、心(psyche)の学であるはずなのですが、我が国の大学や大学院では、現在でも霊や魂がはじめから排除されていることが大半であります。生きることや死ぬことの現実に向き合い、その本質を真剣に問うならば、霊性の問題はまぎれもない最重要課題でありますが、それが学問のマジョリティにおいては未だに避け続けられているという現実は、真剣な探究心を持った学徒への背信ではなかろうかと思う次第です。
 本学会は、そうした生死の本質を真摯に探究するすべての人々のために、質の高い学際的な学術研究を行い、その成果を発信し、だれもが霊性の学を堂々と学べる環境をつくることが重要な使命の一つであると思います。
 本学会が設立された1998年と比べると、今日では幸いにも霊性研究は各方面で行われるようになって参りました。近年、本学会と関心分野が重なる学・協会が次々と設立され、盛んに学術大会やシンポジウムが開催されております。今後は、隣接領域の学・協会などと交流も図りながら、相互に刺激を受けながら活性化と質的向上を目指すことも大切ではないかと思っております。
 個人的な見解ですが、トランスパーソナル心理学/精神医学とは、いわば「悟りの心理学」であると思っています。仏教の言葉で言えば、涅槃(ニッバーナ)へ至る道、すなわち解脱までの道のりを明らかにするという人間にとって究極の関心事を探求する学問です。そこにおいては、霊性のもたらす自己超越の可能性を探ると同時に、心の闇の部分(シャドー、煩悩)とどう向き合い、乗り越えていくのかという実際的な問題も含まれています。
 悟りの心理学の方法論は、すでに言い尽くされているとおり客観主義的・近代主義的な三人称的・自然科学的方法だけでは十分に明らかにすることはできません。当事者として関与する一人称的、二人称的研究、具体的には修行、臨床、諸々の日常実践などにもとづく現象学的に掘り下げるアプローチが不可欠です。つまり、「肉の目」だけではなく、「理知の目」、「黙想の目」による実践的な研究が必要とされており、統合的な視点が求められているのです。
 それは別の角度からいえば、悟りの心理学、超個の学は、自ら実践して体現しない限り、どれほど精密な論理を積み重ねたとしても、絵に描いた餅、月を差す指に過ぎないという限界があるということです。トランスパーソナル学を探求するということは、知的研究にとどまらず、大いなる全体的自己を日々生きようとすることでなくてはなりません。
 本学会の充実によって、多くの探求者に広く貢献できますことを心から祈る次第です。
2015年2月末日

日本トランスパーソナル心理学/精神医学会第三代会長
石川勇一




学会長から皆さまへ



2011年3月11日に起こった東日本大震災は、日本はもとより世界中の人々に大きな影響を与えつつあります。この震災と津波、そして福島原発の事故がもたらした未曾有の災害は、人間と自然の関わり方、科学技術と社会のあり方、そして何より私たち一人一人の生き方を根底から問い直すことを求めているように思われます。
 トランスパーソナルという言葉を初めて使用したW・ジェームズは、経験とは何かを考えていくなかで、西洋的な個人の概念を超えた経験の領域を表すためにこの言葉を用いました。同じ頃ドイツではフッサール、そして日本では西田幾多郎らが19世紀までの西洋近代文明のあり方とその基盤にある学問の再検討に取り組んでいました。1960年代にマズローらが始めたトランスパーソナル運動は、彼らの取り組みの延長上に生まれたものであり、必然的に、trans- culturalであり、trans-generationalな運動であるはずです。西洋近代が矮小化してしまった人間のあり方を問い直し、人類が世代や文化を越えたいのちのつながりのなかで存在するという実感のもとに未来を築いていくために、トランスパーソナル運動は計り知れない重要性をもっていると思います。
 日本トランスパーソナル心理学/精神医学会は、人類の未来への希望の一翼を担えるよう、グローバルなトランスパーソナル運動とつながりながら皆様と一緒に歩んでいきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。


2011年11月

日本トランスパーソナル心理学/精神医学会第二代会長
村川治彦