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日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
設立趣旨

日本におけるトランスパーソナル心理学/精神医学研究の発展をめざして


 トランスパーソナル心理学/精神医学がわが国に紹介されるようになって、十数年が経過し、主要な理論的書物の公刊のみならず、その実践も行われるようになってきた。しかし、わが国ではいまだ専門的な学術研究や議論が十分に行われるまでに至っていない。米国でのおよそ30年に及ぶ歴史やその進展には、現代において注目されるべき数々の学問的主張や業績が積み重ねられており、現在その活動は、欧州の数ヶ国や豪州、ロシアなどでも行われるようになっているが、わが国でも本格的な研究や議論が精力的になされることが待たれており、その期は熟したと考えられる。本学会はこうした研究と議論の場として、わが国において中心的役割を担うことを目的とするものである。主な研究活動には以下のものが含まれる。

人間の成長発達と潜在的可能性についての心理学的・精神医学的研究の推進


 トランスパーソナル心理学/精神医学のアプローチは、まず第一に「人間性心理学」の延長上でそれを乗り越えていこうとする動きとして現れたが、心理学や精神医学の従来の枠組みの拡大を要請するものとなり、理論のみならず、心理療法の臨床実践にも新しい影響を数々与えている。現代では人間の心理的成長・発達や潜在的可能性に対する関心が、一般社会のなかでも大きく広がってきており、その求めに応じてさまざまな心理学理論や心理療法が生み出されるようになっているが、こうした状況が拡大するにつれ、それらに関する現代の科学的・学術的・専門的研究活動の意義と必要性はますます高まっている。

 トランスパーソナル心理学/精神医学では、人間は発達の後期段階において、個人的な関心を超えたものに重点をおくようになるという点が重視され、従来の心理学的発達論が拡張されて捉えられている。すなわち人間の発達は、自我の確立以前の「前個的(プレパーソナル)」段階から、個人として十全な自我機能をもつ「個的(パーソナル)」段階を経て、(その確立の後に)さらにより包括的な視点をもった「超個的(トランスパーソナル)」段階へと至る広範囲な枠組みに立つ点が重要な特徴である。ここでは従来の心理学や精神医学において一般的に認められてきた「生物・心理・社会的モデル」は、「生物・心理・社会・霊的(biopsychosocial-spiritual)モデル」へと広げられている。人間の「心」には、従来の科学的学問の枠組みからは抜け落ちてしまう重要な要素が数多く認められるが、上記の枠組みに立ち、新たな現代的・科学的観点に立って心理学的・精神医学的研究の推進を図ることが本学会の主要目的の一つである。

 研究の視野は、身体技法や諸種の東洋的意識鍛錬実践を含めた新たな心理療法に関する臨床的・理論的研究、人間の変容と治癒に関する研究、心理学諸派の理論や実践との比較・統合的研究(とくに人間性心理学およびユング心理学との対話)、心理学および心理療法と宗教(とくに仏教)との関係に関する研究、創造性や芸術の心理療法的意義に関する研究、臨死状態やターミナルケアなどに関する研究の領域にも広がりをもっている。

人間の「意識研究」の重要性


 上記のアプローチは、人間が取りうるさまざまな「意識(状態)」を重要視することにもつながる。「意識」というものは、哲学的にも定義づけの不可能な概念と言われるが、それは人間という存在にとって最も根本的な重要問題であることは明白である。心理学や精神医学は、本来、この意識という問題にもっとも密接に関わる学問領域であるが、従来のそれらは、「科学的学問」としての方法論上の問題と関係して、この「意識」に直接アプローチすることを避けてきたように思える。トランスパーソナルのアプローチは、これらの「科学的学問」の問題にも挑戦しながら、あくまでも科学として人間の「意識」という問題にも新たに取り組もうとする姿勢をもつ。

 この姿勢には、東洋の伝統文化に存在する各種の瞑想的伝統や修行による「意識状態」への関心を強くもつ点も際だった特徴の一つとして含まれている。東洋にこれまで積み上げられてきた「心理学的体験の記述や洞察」は、人間がどのような意識状態を取りうるのか、意識状態によってどのような認識や知覚の変化があるのか、意識をいかにして変容させることができるのかといった「意識研究」の成果であると考えることもできる。最新の西洋科学の「意識研究」と伝統的東洋哲学の「意識研究」との交流や統合は、現代におけるもっとも重要な研究領域の一つであり、それらをつなぐことのできる「トランスパーソナル」というフィールドは現在世界的に大きな注目を集めている。こうした研究は、世界全体から見た地理的、文化的特質からして、とくにわが国で盛んな研究や議論がなされることが期待されている。

 研究の視野は、意識および変性意識の実践的・理論的研究、瞑想をはじめ意識の変容に関わる世界の伝統的諸技法やシャーマニズムの研究、それらの現代における意義についての研究、文化および社会と意識との関係に関する研究、物質と意識(脳と精神)、身体と意識(精神)の関係についての研究など、幅広い分野を含む。

学際的広がりとしての「トランスパーソナル学」の展開


 「トランスパーソナル」は、もともと心理学の中から必要性に迫られて生まれた概念だが、近年では他の学問諸分野からも大きな関心が寄せられるようになっている。すでにトランスパーソナル精神医学、人類学、宗教学、社会学、生態学などの名称も使用されるようになり、学際的交流と研究活動が行われるようになってきた。従来の科学的諸学問の枠組みからは排除されがちであった人間のある種の心理的体験が、トランスパーソナルという用語で学術的に取り上げられたことによって、そうした人間の体験がそれら諸学問のなかでも本来重要な位置を占めていることが再評価されようとしている。この動きは、ただ学問的研究にとってだけでなく、現代社会に生きる人間にとって非常に重要な意味を含んでいると考えられる。このような議論を深めていくためには、従来の学問枠にとらわれることなく、さまざまな学問領域からの発言を活発に行える場が必要になってきているが、本学会ではそれらの議論に積極的な場を提供したい。

新たな世界観の探究に向けて


 トランスパーソナルな発達段階における人間の体験的意識は、古来から世界の各地で、人間の生にとってかけがえのない貴重な洞察を残してきたものと考えられる。科学主義的・合理主義的・個人主義的世界観が行き渡ったように見える現代が一種の行き詰まりを見せ、それに変わる新たな世界観を必要としているとすれば、これまでその現代的価値観の進展ゆえに排除され、蔑視されてきたとも言えるそれらの貴重な諸洞察を、人間の心理学的体験として正当に評価しなおし、それらを再発掘しながら、現代の学問的立場に立った議論を行うことは重要な意義をもつ。また、そうした大きな時代の転換期のなかで新たに浮上しつつある人間の意識の変化は、トランスパーソナルという概念と深い関連をもつものであり、それらを積極的に取り上げることは大きな価値をもつ。

 その中心的課題としては、西洋近代科学と東洋哲学や宗教との対話・そして統合への努力、多文化間の対話、霊性と宗教、霊性と現代社会、地球規模の危機への反応、これらに関わるオルタナティヴの模索、現代思想におけるトランスパーソナル理論の位置づけおよび従来の諸学問との関係や対話に関する研究などが挙げられる。

日本トランスパーソナル心理学/精神医学会では、


 これらの研究促進を目的に、年次大会の開催や講演会などを通しての一般社会への普及活動、海外も含めた研究成果の発表や紹介(会誌の発行)、ニュースレターの発行、わが国のシンクタンクとして諸外国との交流などを行う。